レーザー血流画像装置 Laser Speckle Blood Flow Imager
測定原理
(簡易版) レーザー光のように位相がそろった光(コヒーレント光)を粗面に照射すると、
図1のようなスペックルパターンと呼ばれる粒状の模様が生じます。
図4. 静止している物体からの散乱光の重ね合わせ
図4のように、静止している物体にレーザー光を照射してその散乱光を光検出器
で検出した場合、得られる光は各点からの散乱光の重ね合わせとなります(図4右上
図)。各点からの散乱光の位相の関係は時間に関係なく一定なので、光検出器で出
力される光強度の信号Iは時間tで変化せずに一定値となります。これは、光の周波
数が高いために、光検出器の出力が一定の光の強度として得られるからです。
次に検出体積内で粒子等が移動している場合を考えます。
図5. 静止している物体と移動している粒子からの散乱光の重ね合わせ
図5のように、粒子が時間t1からt2までにある距離を速度vで移動した場合には、
レーザー光がt1に在る粒子に照射されて光検出器で受光されるまでの光の散乱方向
と通過距離と、レーザーがt2に在る粒子に照射されて光検出器で受光されるまでの
光の散乱方向と通過距離は異なります。レーザー光の波長は780nmと非常に短いた
めに、この光の違いが光検出器上では光の位相のずれとなります。粒子が連続的に
移動していると、この位相のずれも時間的に変動します。したがって、各点からの
散乱光が重ね合わされた光の強度が揺らぎ、光検出器の出力としての光強度Iも時
間的に揺らぎを生じます。この揺らぎの速さと大きさが粒子の移動速度とその量に
対応しています。
図7. 動いている物体を測定
しかし、動いている物体を測定した場合には原理で述べたように、強度が変化します
(図7)。
図8. 流速が早くなった場合
図7ではCCDの積分電荷の平均値に対して、各蓄積時間の積分電荷は大きく変動し
ますが、図8では平均積分電荷に対する変動は小さくなります。
b. 赤血球数(数密度)が増加した場合 : この場合も、多くの赤血球からの散乱
光が重ね合わされることによって、CCD蓄積時間内の受光強度の変動が小さくなります(図9)。
図9. 赤血球数(密度)が増加した場合
これらの現象を利用して、ある一定時間内(1/60sec程度の蓄積時間
)の受光強度を測定して、その変動(平均強度に対する変動)を計算する
ことにより血流量を求めています。光ファイバー式レーザー(ドップラ
ー)血流測定法では、アナログ受光強度の変動が速いほど、変動の大き
さが大きいほど血流量が高いと演算されますが、本スペックル血流測定
法ではCCDの蓄積時間内の変動が小さいほど血流量が高いことになりま
す。光ファイバー式レーザー(ドップラー)血流測定法と本スペックル血
流測定法は、基本的には同じであることがBriersによって報告されてい
ます。
Briers, J. D. : Laser Doppler and Time-varying Speckle: A Reconciliation, Opt. Soc. Am. A, 13, 345-350 (1996).
図10. 血流が少ない場合 図11. 血流が多い場合
これから各ピクセルの輝度の変動から血流量を演算し、カラーイメージで表示した
ものが図12になります。