測定深度はレーザー光の照射点ー受光点間距離の関数です。受光強度, Id, は、散乱が強い組織でベール-ランバートの法則が適用されるときには、
Id = η・Io・ exp ( - γ・L)、
で表されます。
ここでηは光システムに関わる係数、Ioは照射光強度、γは生体組織の減衰係数、Lは光が通過する距離(光路長)です。照射点ー受光点間距離が長くなると全受光強度自体は弱くなりますが、測定深度は深くなります。この理由は、距離が長くなると相対的に浅い場所から散乱された光強度と深い場所から散乱された光強度の差が少なくなるからです。Fig. 5にその状態を示します。Fig. 5の左図は照射~受光間距離が短い場合、右図は長い場合です。それぞれ同じ深度から戻ってきた光の通貨距離を、L1とL3、L2とL4 とします。
左図ではL2 >> L1なので、全受光量に占めるL1からの成分がL2からの成分より非常に多くなります。しかし、右図ではL3とL4には大きな差がないために、L3を通ってきた受光強度とL4を通ってきた受光強度の差が小さくなり、相対的に全受光量に占めるL4からの成分が多くなります。
この図から、照射~受光間距離が長いほど深部からの信号が多く含まれるようになることが確認できます。
実際に皮膚と光学特性が同様の物質であるポリアセタール板1)を用いた生体組織モデルを用いて、OMEGAFLO-DVCと光ファイバー式レーザー血流計のOMEGAFLO-Labの測定深度を比較して推測しました。Fig. 6に測定に使用した簡単な構造の組織血流モデルを示します。ポリアセタールのブロックに円柱状の穴が開いており、中に微粒子分散液(0.35μm, 1%)が入っています。この上に0.3mm厚のポリアセタール板で蓋をしてあります。この上に0.3mm厚のポリアセタール板を重ねて行き、一番上にFLO-Lab用のプローブ(DS)とFLO-DVCのセンサー(DVC-DS)を置いてFLOWの値を調べました (Fig. 7)。レーザー血流計はブラウン運動する粒子の動きを検出して測定値FLOWを表示します。
板厚tと、蓋のみの状態でのFLOW値で規格化したFLOW値(Normalized FLOW) の関係をFig. 8に示します。
Fig. 8の結果から、当社の光ファイバー式のレーザー血流計とそのプローブでは1mm程度の深さからの信号はで10%程度の値に減少しますが、FLO-DVCでは2mm程度で10%程度に減少しています。この結果から、FLO-DVCでは光ファイバー式のレーザー血流計とそのプローブよりも更に深い場所の血流も測定すると推測されます。