通常(プローブ接触型)のレーザー血流計用プローブを生体組織に接触させないで血流測定を行った場合の問題点は、生体組織表面からの反射光の影響です。プローブを生体組織に接触させて血流測定をした場合、受光した散乱光はすべて生体組織内部からの光で、表面からの反射光は受光しません。レーザー血流計の演算処理において、赤血球数密度が低い場合には、周波数シフトされていない光(光電変換後の直流成分)は静止組織からの散乱光として信号処理されます。周波数シフトされた光(光電変換後の交流成分)は赤血球からの散乱光として信号処理されます。レーザー血流計では、測定している生体組織の血液量(赤血球数密度)はそれぞれのパワーの比、交流成分パワー / 直流成分パワー、から得ています。
接触型レーザー血流計用プローブを生体組織に接触させないで測定すると表面からの反射光を受光してしまいます。この表面反射光は周波数シフトされていないので、静止組織として演算処理されます。この結果、実際の血液量よりも少ない値を表示してしまいます。また、表面反射光強度は生体組織の構造と状態やプローブとの位置関係によって異なるために、安定して測定ができなくなります。
表面反射光は照射光の偏光を保持していますが、生体組織に入ったレーザー光は何度も散乱するために照射光の偏光方向を保持せずにほぼランダムになります。したがって、照射光と垂直に偏光している散乱光のみを受光すれば、生体組織からの散乱光のみを受光することになり、表面反射光を受光ません。FLO-N1専用のプローブ先端には偏光板と光フィルターが付いています。偏光板は照射と受光の偏光面が互いに垂直になるように取り付けられています。光フィルターは照射レーザー光の波長を通過させ、蛍光灯の光を遮断します。さらに、FLO-N1はプローブと生体組織間隔の変化によるアーチファクトを軽減するように設計されています5)。
Fig. 10 偏光板取り付け関係図
参考文献 :
1) S. Kashima : Model for Measurement of Tissue Oxygenated Blood Volume by the Dynamic Light Scattering Method,
Jpn. J. Appl. Phys., 31, 4097 (1992).
2) 鹿嶋 進 : 生理機能観測のためのレーザー組織血流計による血流測定法, 生理人類, 2,39(1997).
3) S. Kashima : Study of Measuring the Velocity of Erythrocytes in Tissue by the Dynamic Light Scattering Method, Jpn. J. Appl. Phys., 32, 2177 (1993).
4) S. Kashima : Measurement of Tissue Blood Volume in a Model System and in the Canine Intestine by Dynamic Light Scattering, Laser. Life Sci., 6, 79 (1994).
5) S. Kashima : Non-contact Laser Tissue Blood Flow Measurement using Polarization to Reduce the Specular Reflection Artifact, Opt.Laser Technol., 26, 169 (1993).